ブルゴーニュ コート・ド・ニュイのぶどう畑散歩ガイドブック

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21. fumureフュミュール(施肥)

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畑に届けられたコンポストの入った袋。
この季節になると、村のあちこちで見かける風景だ。


ここ数年間の収穫量やぶどうの質、樹の枝の太さや葉の状態など、総合的にぶどう畑を見てコンポストや肥料を今年撒くかどうか、所有者が各区画ごとに判断する。畑の土や、生長期の葉を試験所で分析してもらって、その数値をみて施肥が必要かどうか判断することも可能。



植物の必須3大栄養素は、ぶどう樹の中でこんなふうに働くと考えられている

N 窒素はとくに、葉を充分に茂らせたり、枝を太くする
P リンはとくに、開花と結実を安定させる
K カリウムはとくに、病気や霜に対しての抵抗力をつける。また、果汁の糖分をより豊かにし酸をより少なくする
 
・・・という解説を参考にしている人もいれば、全然気にしない人もいる。


そして、コンポストや肥料を自作するドメーヌもあれば、上の写真のように、購入して届けてもらうドメーヌもある。このコンポストの質は安定していて、含有している成分も記載されている。その栄養素についてはおいおい見ていこう。



土にかえるというのはどういうことだろうか

ぶどう樹の葉、枝、果実、根・・その年の役割を終えた器官は土にかえることができる。
もちろんぶどう以外の植物も、そして命をまっとうした動物も微生物から小さな哺乳類までぶどう畑で土にかえる。では、土にかえるというのはどういうことだろうか。

土中に生きている小さな動物や虫や微生物が、土の上に落ちたこれらを食べる。そして消化吸収排泄されることで、humificationユミフィカスィオン(腐植化)される。

けれどもこの腐植質は有機化合物なので、まだぶどう樹の根はこの物質を栄養として吸収できない。分子では大きすぎるのだ。

そしてもう一度、またちがう微生物たちがこの有機化合物を食べ消化吸収排泄することで、
minéralisationミネラリザスィオン(無機化)されると、イオンになって水に溶けるようになるから、ぶどうの根が栄養素としてそれをやっと吸収できるのだ。

秋に黄金色になった葉が土の上に落ち、いつのまにか土と同じ色になり、かたちが失われて、土と見分けがつかなくなる。土になっている。そのあいだに多くの生物の営みがある。そして土になったということは、また別の生物の営みの糧となるということでもある。



agriculture biologiqueアグリキュルチュール・ビオロジック(有機農業)と施肥



compostコンポストは微生物によってhumificationユミフィカスィオン(腐植化)された有機物だから、AB (agriculture biologiqueアグリキュルチュール・ビオロジック(有機農業))の認定を受けている畑にも使うことができる 。

compostコンポストがぶどう畑に撒かれると、土壌の微生物によってminéralisationミネラリザスィオン(無機化)され、やっとぶどう樹(もちろんほかの植物も)の栄養になれる。




こちらの顆粒はengraisアングレ(肥料)。
humificationユミフィカスィオン(腐植化)とminéralisationミネラリザスィオン(無機化)の両方が生物によって行われて、その後も化学的な処理がされていないから、無機化までされた肥料もABの畑に使うことができる。

ABの畑へ撒くことが禁止されているのは、化学的に抽出された成分(有機物でも無機物でも)を調合したタイプの肥料だ。植物は結局イオン化された無機物しか吸収できないんだから、化学的に大量生産して畑に撒いてみようー!という農業では、土の中の生物はいてもいなくてもいいことになってしまう。いなければ、落ちた葉っぱはなかなかなか土にかえらない。


そんなわけでagriculture biologiqueアグリキュルチュール・ビオロジックの施肥には、とにかくhumificationユミフィカスィオン(腐植化)とminéralisationミネラリザスィオン(無機化)を担う生物が不可欠だ。これらの生物が消化吸収排泄している、つまりその環境に生きているということが重要なのである。栄養素をサイクルさせる土中の生物は、その畑の生態系を構成するたいせつな存在だ。

日本語では有機農業と表されるこのことば、フランス語では直訳するとagriculture(農業) biologique(生物学的・生物の)となり、生物ありきの農業という面がより強調された表現になっている。



buttageビュタージュ後の畑に撒かれたcompostコンポスト



強烈な不自然さと、それと同じだけの必然性

土っていったいどういうシステムになっているのかよく考えたことがなかったから、humificationユミフィカスィオンとminéralisationミネラリザスィオンと植物の栄養の循環を知ったとき、衝撃がはしった。まったく目に見えないものが、巨大なものを動かしている。ワインの醸造中にfermentation alcooliqueアルコール醗酵を目の当たりにした時とおなじ衝撃だ。キュヴ(醗酵樽)のように土壌も大きな1つの生き物のようであり、しかも醸造の場合も畑の場合も、人間の存在、判断、仕事もそこへ組み込まれていておもしろい。



ぶどう樹はわたしたち人間の寿命を遥かにこえる時間を、ひとつの環境で生きることができる。そんなvieille vigne(古木)もこの生態系を構成するひとつの要素だ。けれどここはぶどうの原種が育つ、手つかずの森の中ではない。
この風景をつくっているのは、強烈な不自然さと、それと同じだけの必然性をもって極まるpinot noirピノ・ノワールの単一栽培農業monocultureのぶどう畑だ。・・このテーマは『Terroirテロワールのことを、もっと知りたい』に引継ごう。





 

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