ブルゴーニュ コート・ド・ニュイのぶどう畑散歩ガイドブック

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51. labourラブール(耕起): 土とは、なんだろうか

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ぶどう樹が植わっている畑の土を耕すことが、labourラブール(耕起)だ。
土を耕す。耕すってなんだろう。
ん?そのまえに、土ってなんだ。身近すぎてよく知らないぞ。
そして身近といっておきながら、どこからどこまでを土と呼んでいいのかもあやふやだ。



ぶどう畑の足もとには3つ層がある

ぶどう畑の地面は、どれだけ深く掘っても均一な土が続いているというわけではない。だから土壌をあつかう学問では、層を数えていくつにも細かく分類しているし、そもそも観点によって数十の分類方法がある。ここでは、ぶどう栽培の仕事の中で重要視される3つの層をみておこう。

couches.png

solソル(土壌・表土)
 耕せる土の部分の層。
 labourラブール(耕起)の仕事の対象になるのはこの層だ。
 コート・ド・ニュイの村名以上の格のぶどう畑は地表から
 35~70cmまでの深さがsolソル(土壌)だといわれている。
 深さは区画によってことなり、ちなみにロマネ・コンティ
 のsolソル(土壌・表土)は40cmだ。

sous-solスー・ソル(solソル(土壌)の下の層)
 土はあるものの、大きな石や岩が混在していて、
 耕すことができない層。

roche mèreロッシュ・メール(母岩)
 sous-solスー・ソル(solソルの下の層)のさらに下の層。
 詳しくはこの後で出てきます。



soletsoussol.png
シャンボール村のすべてのドメーヌでつくる組合が、ブルゴーニュ大学の地質学の先生をよんで
みんなで自分たちの村の地質の勉強会。助手の方がちっちゃなショベルカーで
いくつもの区画をsous-solスー・ソル(solソル(土壌)の下の層)が現れるまで掘っていく。
掘る区画、掘る区画、みごとに特徴がことなる。

rochemere.jpg
ここは15センチ掘ったところでroche mèreロッシュ・メール(母岩)にたどり着いてしまった。
赤く見えているのは筆者のボールペン。




そして土。土とは、なんだろうか

土には、いろんなものが混ざり合っている。
そのすべてを分類しみてると、無機物・有機物・水分・空気・生き物という要素になる。
それでは、ブルゴーニュのコート・ド・ニュイのぶどう畑の土の要素をみていこう。


無機物
岩石が風化してできた、大小さまざまな石ころ。
地質学では直径2mm以上の粒をgravesグラーヴ(礫)と呼んでいて、直径によって4種類に分けている。
2~4mm granulésグラニュレ(細礫)
4~64mm graviersグラヴィエ(中礫)
64~256mm gros caillouxグロ・カイユー(大礫)
256mm以上 blocsブロック(巨礫)


lesgraves.jpg
コート・ド・ニュイのぶどう畑では、区画によってはこれら4種類の大きさのgraveグラーヴ(礫)すべてを見つけることができる。しかしぶどう樹の苗を植えたり、labourラブール(耕起)を円滑におこなうために、gros caillouxグロ・カイユー(大礫)やblocsブロック(巨礫)は取り除かれることがおおい。


そしてコート・ド・ニュイのぶどう畑を特徴づける無機物といえば、粘土だ。
岩石が風化し、1/256 mm以下という小さい粒子になり、それらが集まってできたargilesアルジル(粘土)。そしてargilesアルジル(粘土)を15%以上(または20%以上という分類方法もある)含んだ土壌を、sol argileuxソル・アルジルー(粘土質土壌)と呼んでいる。この語は
ぶどう畑の区画のプロフィールを読んでいるとよく出てくるのではないだろうか。


「岩石が風化して~」という表現をなんどかしたのだけれど、この「岩石」こそが3層目のroche mèreロッシュ・メール(母岩)だ。ぼがん。かーちゃんの岩。誰のかーちゃんかというと、そう。大小さまざまな石ころ(礫)や、粘土の粒子たちのかーちゃんだ。

rochemere3.jpg

かーちゃんが途方もない長い時間、たたずんでいた場所の環境によって風化されてきた結果が、この畑の無機物なのだ。だからかーちゃんの性質によって、この区画の特徴が左右されるということになる。かーちゃんの誕生や、かーちゃんの成長、かーちゃんたちの種類などは、『Terroirテロワールのことを、もっと知りたい』のページに譲ろう。


有機物
大小さまざまな生き物の死骸、ぶどう樹の落ち葉、それ以外の植物の生命活動を終えた器官。agliculture biologuiqueアグリキュルチュール・ビオロジック(有機栽培)が採用されている区画の場合は、コンポストや有機肥料など。くわえて、それらが微生物に代表される生き物よって分解(humificationユミフィカスィオン(腐植化))されてできる腐植も有機物だ。

そして、この腐植をさらに微生物が分解(minéralisationミセラリザスィオン(無機化))すると無機物になり、水にイオンとして溶けると、植物が根から吸い上げることができるから、生長のための栄養になる。

また、argilesアルジル(粘土)は電荷を帯びていて、イオン化した無機物を引きつけけておける。植物の根からしてみると、そんなsol argileuxソル・アルジルー(粘土質土壌)は栄養素をたくさん用意しているレストランのような存在だろうか。となると、微生物たちは料理人のような立場かもしれない。微生物にしてみれば、ただ生きているだけだけどっ。


水分
土は大小のお団子のようなかたまりの状態だから、水分はその隙間に溜まって存在している。
水を主成分に、さまざまなイオンや有機物が溶けたり、混ざったりしている。
栄養素がいくらたくさん土中にあっても水に溶けていないと、植物の根は体内に取り込むことができない。


空気
水分と同じように、土のかたまりとかたまりの隙間に存在している。
二酸化炭素、窒素、水蒸気、酸素など。その成分は土の中の生き物の呼吸に影響される。


生き物
もぐら、ミミズ、大小さまざまな昆虫(成虫になれば飛び立つ虫でも、幼虫は土の中という場合も)、ダンゴムシ、ムカデなど足の多い虫、クモ・ダニ、線虫、原生動物・・・

また、カビ・キノコなどの菌類・細菌類など。
土の中や、植物の根の表面や表皮下に生きる微生物は研究者が歓喜するほどに多様で、目下研究が進められているところだ。厳密な種類や性質やその数など、わかっていることは限られているということだ。

有名どころでは、虫の仲間でフィロキセラ、そしてオイディウム、ミルデューが代表するようなぶどう栽培に害をあたえる菌類も表土や、地中で生きる。



土の世界

土を構成する要素、無機物・有機物・水分・空気・生き物がそれぞれにとって必要不可欠で、サイクルを形作っている。土というのは物の名前というより、このサイクルやシステムの名前という感じがしてくる。

terre1.png

植物も動物もその生命活動を終えると、からだは有機物として各種生き物によって分解される。
有機物は、生き物に分解されて、無機物になり、水に溶けると、植物に吸収されて栄養になる。
生き物にとっては、有機物は栄養であり、水分も空気も生きるために必須だ。
粘土質の土壌は、植物の栄養となる無機物をイオンの形で蓄えておくことができるし、隙間に水分や空気をたもっている。


こんなふうに土とそこにはえる植物という関係のなかで、ぶどう樹は果実をめぐみつつ、vieille vigneヴィエイユ・ヴィーニュ(ぶどうの古木)になる。年や畑ごとにそのぶどうは甘かったり酸っぱかったりしながら、醸造され熟成し、おおくの人に味わわれ、料理とあわされたり、ワインのおおきな世界につながっていく。強烈に記憶に残ったり、おおくの人へ共通のテロワールの記憶を与えるワインは、こうして土からはじまっているんだ。



ぶどう樹が植わっている畑の土を耕すことが、labourラブール(耕起)。
耕すことで、無機物・有機物・水分・空気・生き物にどんな影響があるのだろう。




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VV1300100.jpg Vieille Vigneヴィエイユ・ヴィーニュの仕立て方 もくじ
 このカテゴリーのもくじです。



VV20300100.jpg 20. buttageビュタージュ(土寄せ)
 -Vieille Vigneヴィエイユ・ヴィーニュの仕立て方-
 buttageビュタージュは土にほどこす仕事のひとつで
 厳寒期がくる前におこなう。ぶどう樹の根元に
 畝の両側から土を盛っていくのが特徴。



VV21300100.jpg 21. fumureフュミュール(施肥)
 -Vieille Vigneヴィエイユ・ヴィーニュの仕立て方-
 総合的にぶどう畑を見てコンポストや肥料を今年撒くかどうか、
 所有者が各区画ごとに判断する。



VV24300100.jpg 24. débuttageデビュタージュ(畝崩し)
 -Vieille Vigneヴィエイユ・ヴィーニュの仕立て方-
 厳しい寒さがくる前にbuttageビュタージュで
 ぶどう樹の根元にかぶせた土を
 寒さがすぎた後もとに戻す耕作のこと。


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